縁結び 恋愛成就 京都地主神社だより 令和２年３月号

　現在、世界中で新型コロナウイルスによる感染症が拡大しています。

　日本国内でも感染者数は増加の一途をたどっていますが、検査キットが不足しているので、正確な罹患者数は判明していないのが現状です。

　京都市を訪れる外国人観光客は激減しました。日頃は満員電車のような様相を呈している神社仏閣も、境内では閑古鳥が鳴いており、静かなものです。少し前までの喧噪や混乱が嘘のような光景です。

　なので、京都市内の観光スポットはどこに行っても行列はなく、市バスにも一回目に来たバスに乗れます。（日頃は超満員で積み残しがでます）

　住民としては、本来の生活、本来の姿がもどってきたと感じる人も多く、とくに通勤、通学の人は混雑の緩和を実感しています。

　しかしながら、観光都市としてはいろんな問題もあるわけで、業界は大変です。

　常に何ヶ月先までも予約でいっぱいだったホテル、旅館、ゲストハウスもキャンセルが相次でいます。

　他府県のホテルなどでは、すべての予約がキャンセルとなったため、従業員を解雇、閉鎖を決定した施設もあります。地方の場合、中国人観光客のみがお客様という場合も少なくなく、渡航禁止となってる状況ではどうしようもありません。

　さすがに京都は、観光に訪れるのが外国人だけということはないので、そこまで極端なことにはなっていないようですが、しかし、長期化すれば経営に支障をきたすのは必至です。

　昨今の外国人観光客の激増で、京都市内では新たなホテル、旅館が次々に開業しました。一流ホテルに限らず、ゲストハウス、民泊、カプセルホテルまで、大小合わせて数えきれないほどの宿泊施設が新設されたのです。

　こんなにたくさんのホテル、旅館があるというのに、常に予約はいっぱいでフル稼働だったのですが、ここに来てキャンセルが相次ぎ、空室がでるようになってしまいました。

　政府の２０２０年の訪日旅行者数目標は４０００万人だそうです。訪日旅行消費額目標は８兆円です。

　ちなみに、２０１８年の訪日旅行者数は３１１９万人、訪日旅行者消費額は４兆５１８９億円でした。

　目標数値を見ると、政府がいかに２０２０年のインバウンドに期待していたかがわかります。

　２０２０年二月現在、国内の宿泊施設ではすでに向こう何ヶ月もの外国人観光客のキャンセルが決定しています。旅客機、クルーズ船などの交通機関も同様です。

　観光はもちろん、物流にも様々な影響がでており、この災禍はいつ終息するのかと誰もが思っています。

　感染症専門の医師によると、こうした感染病の大流行というのは、罹患し免疫を獲得した人が増加し、その人達が盾になることで流行は終焉を迎えるというのがパターンなのだそうです。

　考えてみれば、治療法、予防ワクチンがないのですから、それ以外に終息する道程はありません。

　人類の歴史はその繰り返しでした。科学、医学の発達した近代においても、常に何らかの感染症が人々の間に流行し、闘いを余儀なくされています。

　京都の伝統的な祭事は、疫病の鎮圧、終息を祈願してのものが多く、千年前も令和の現在も人々の恐れるものは変わっていないとよくわかります。

　京都でもっとも大きな祭事である祇園祭も、起源は疫病の鎮圧です。

　貞観１１年（８６９年）疫病の大流行により、国の経済、治安が悪化し、この災厄の除去を願って鉾を立てたのが始まりだそうです。

　祇園祭は七月一日の「吉符入り」に始まり、数々の神事、催事を経て、三十一日の「疫神社夏越祭」で幕を閉じます。

　千年前の医学では、感染症の予防も治療も方策はほとんどなかったでしょう。点滴も人工呼吸器もないのですから、罹患した人は衰弱し、死を待つしかなかったのです。

　水道も下水道も消毒薬もなく、衛生環境が劣悪だった時代、疫病は容易に人々の間に流行し、惨状をきわめたものと思われます。

　令和の時代にも、治療法の確立されていない感染病が流行り、人々を苦しめています。

　どんなに科学や医学が進歩しても、人類が直面する災禍はあるわけで、なくなることはないのだと、あらためて思います。