福島、山形、宮城、岩手、青森に伝わるお正月の行事。
例年2月17~20日に行われ、種まきから収穫までの様子を踊りにして舞い、今年の豊作を祈ります。 えんぶりとは、田をならす「えぶり」という用具から名付けられました。
演者たちが笛や太鼓、銅拍子(どうびょうし)で囃(はや)しながら、家々を回り舞を演じます。八戸のえんぶりは国の重要無形民俗文化財に指定されています。
小正月には、子どもたちがワラで小屋を作ってその中で過ごす「正月小屋」の行事が各地に伝わっていますが、雪の多い地方では、その小屋を雪でつくります。秋田県では「かまくら」といい、新潟県では「雪ン堂」とよばれていました。
秋田県横手地方のかまくらは有名で、水神様をまつる行事として、月遅れの小正月(2月15日前後)に行われます。子ども達が中に入って、お餅を焼いたり、甘酒を用意したりしています。外から来た人が水神様を拝み、おさい銭を置いたりして、お餅や甘酒がふるまわれます。
東北地方のお正月行事としてよく知られています。よび方は地方によって違いがありますが、どの地方でも「なもみをはぐ」という意味を持っています。「なもみ」というのは、火にあたるとできる肌のあざのことで、「冬に火のそばにばかりいるなまけ者を追い払う」という意味です。
とくに秋田県男鹿(おが)半島のなまはげは、規模も大きく有名です。もともとは小正月の行事でしたが、大晦日に行われるようになりました。
みのをまとった村の若者たちが鬼の面をつけて、手には大きな木製の包丁と手桶をもち、大声を上げながら家々をまわります。
「ウォー、ウォー、悪い子はいね(いない)か~!泣く子はいね(いない)か~!袋さ入れて連れていくぞ~」
などと言いながら、家の中を歩き回るので、幼い子どもは親にしがみついて泣きわめきます。それを一家の主人がお酒や餅でもてなし「どこから来たのですか?」「新しい農作物のでき具合はどうですか?」などと問います。この地で暮らす人びとは、なまはげを自分たちを見守ってくれる神様として迎えます。
東北地方で広く行われている行事で、雪の降り積もった庭を「田んぼ」に見立てて、主に年男の一家の主人が雪の上にもみがらをまいたり、わらを苗に見立てて田植えのように雪に植えていきます。そうすることで今年一年の豊作をお祈りします。
神社の境内で、1年間の米作りの仕事を歌としぐさで表現して稲の豊作を祈願する行事。 種まきから田植え、稲刈りの様子を、唄いながらまねをする「田遊び」です。約3m四方に笹竹を立ててしめ縄を張りめぐらせ、「もがり」と呼ばれる聖域を作ります。真ん中に置かれた太鼓を田んぼに見立て、十数人の農民役が太鼓を囲んで、歌を唄いながら田遊びを進めていきます。
静岡県浜松市にある西浦(にしうれ)の観音堂に古くから伝わる芸能です。1月18日の夜から19日の明け方まで、境内に大松明(たいまつ)をたいて大がかりなお祭りが行われ、演者が舞いなどを披露します。もともと稲の成育を願って行われていましたが、現在は病除けのための行事にもなっています。
小正月に全国各地で行われていた厄よけの行事です。田畑に悪さをする鳥やもぐらを、村の境を守る神様のところまで追い払います。地域によって家ごとに行うものと、村の行事として主に子どもたちによって行われるものとがありました。
長野県下水内(しもみのち)郡栄村(さかえむら)の鳥追いは、小正月の夜、村の子どもたちによって行われています。まずは雪の夜歩きに備えて甘酒で体を温めます。甘酒で体が温まったら、いよいよ出発。最年長の少年がほら貝を吹いて先導し、子どもたちは一列になって歌いながら歩きます。そのうちの何人かは「横槌(よこづち)」という木づちを、ひもで引きながら歩きます。これはもぐらをおどすための道具で、子どもたちは「もぐらが土の中をおこして頭をだしたらたたくぞ」という内容の歌を歌います。続いて害鳥も追います。
こうして家々をまわりながら村の境まで歩いた子どもたちには、みかんやお菓子がふるまわれます。